実家の裏山には竹林がある。
少し歩くとフキやゼンマイ、タラの芽が自生している。
幼い頃から春といえば筍堀りだった。
掘り起こされたばかりの筍のずっしりとした重み、湿った土の匂いが懐かしくて、今は亡き祖母の手伝いをしていた頃のなにげないシーンが思い出される。
庭先に大きな鍋を出して、ひと掴みの米糠と煮る。
冷めたら糠を洗い落として、水煮の状態で大阪に持ち帰った。
山椒の木もたくさん育ててある(正確には勝手に育っている)。
掌に収まるくらいの小さなパックで売られている様子に慣れてしまっているせいか、欲張ってたくさん摘んで持ち帰った。
これほどに実りの多い環境で暮らしていたこと、今になって知りはじめた。
急遽、おもい立ってのお忍び帰省。
親戚や友人に会いに行く機会は控えたからこそ、実家の良さを再発見することができた三泊四日。何より、両親の顔を見てほっとした。