6月9日は芍薬の日。
と、勝手に決めている。
10年前のこの日、祖母が亡くなった。
幼い頃は学校から帰るといつも祖母と過ごしていた。
母が家にいても、どちらかというと祖母の活動が好きで追いかけていたように思う。
活動というのは主に菜園や竹林、庭先での作業で、祖母はだいたい地下足袋を履いていた。
私はその小さいけれどきりっとした足元に憧れていた。
夏は健康的に日焼けした頬も、冬にはすっかり色白に戻っているところにも憧れていた。
祖母というより、歳の離れ過ぎた姉みたいな気持ちを持っていたからよく喧嘩もしていた。
そんな祖母の他界は、涙がこぼれ過ぎて、弔辞を読むのが困難。
そんなに泣いたら、当時まだお腹にいた赤ちゃんが心配して良くないとさえ言われていた。
葬儀の朝は静かに雨が降っていて、視界は全て薄いグレーに滲んで見えていたように思う。
でも、唯一実家の庭先に花を咲かせた一輪の芍薬だけが淡いピンク色だったのを鮮明に憶えている。
その花の種を蒔いたのは祖母。
そんなわけで、私にとって、6月9日は芍薬の日。
夢で会いたいと今でも願っているのだけど、そう会えない。
自宅から一番近い花屋に芍薬を求めに子供たちと向かった。
残念なことに売れ残りの雰囲気が漂ったものが二輪。
気を取り直して、もう一件の花屋へ。
コロンとした蕾が和菓子みたいで、それはそれは美しい芍薬に出会えた。
嬉しくて、きっと今夜こそ夢で会えるかもしれないと期待したのだった。